海運会社社長の解説が、こんなにくわしい説明は初めてと話題の様だ。
神戸にある海運会社「東幸海運株式会社」(本社、神戸市東灘区)が公開した、タンカー船の舞台裏を紹介する動画が話題になっている。
中でも注目を集めるのは「なぜ船底を赤色に塗装するの?」という質問。
解説するのは同社社長の笹木重雄さん。
噛み砕いた説明や落ち着いた口調が評判を呼び、ネットユーザーからは「こんなにくわしい説明は初めて」「分かりやすい」「面白い」「わくわくした」「勉強になった」と好評だった様だ。
<赤色の理由を笹木社長に聞くと>
塗料の塗り直しは大変な作業らしく、4~5日かけて船底を赤い塗料で塗り直すという。
なぜ船底を赤色に塗装するのか…
ズバリ社長は、船底にフジツボなどが付かないようにする為だと言う。
フジツボとは、岩や船底、他の動植物にくっついて動かない固着生物。
笹木社長によると、船底にフジツボが付着すると船の速度が落ち、燃費も悪くなるそうで、普段14.5ノット(時速26.8km)出るタンカー船が12ノット以下(時速22km以下)になる事もあるそうだ。
そこで登場するのが赤色の亜酸化銅、亜酸化銅という成分が含まれている塗料を使う事が多いと言う。亜酸化銅にはフジツボの付着を防止する効果があると言われ、この成分が赤色なので船底塗料も赤色になることが多い。
塗料は1年で溶け、1隻にかかるペンキ代は、年間1隻あたり、年間のペンキ代だけで約220万円程度、これにメンテナンスの人件費などを加えると大体400~500万円が毎年掛かる事になる様だ。
当社の船は5隻ですので、その約5倍の塗装コストが毎年掛かっており、古い船ほど補修の面積が増えて高くなるという。
<船底が赤いのは万国共通か>
亜酸化銅は船底塗料成分として最も一般的に使用されている塗料で、原材料が赤色の物が最も安価だが、費用を追加すると他の色にする事も出来る。
例えば、漁船などでは魚に気付かれにくい青色にされるケースもある様だ。
<塗装作業の手順は>
最初に船体の水洗いを行い、塗膜が傷んだ部分をグラインダーで削り、鉄が露出した部分にさび止めを塗装、その後に亜酸化銅を含んだ塗料を塗る。
塗り直しのタイミングは、当社の国内航路を航行するタンカー船は年に1回のメンテナンス期間があるため、都度1年で溶けるだけの船底塗料で塗装を行う。主にフジツボの付着で船底が汚れると、途端に船の速度が落ちる事になるので、なるべく短い期間でのメンテナンスが好ましい。
海外航路の船舶は、メンテナンスそのものが当社船を含め5年間に2回のケースが多く、3年間分の塗料を塗るケースもあるそうだ。
<まとめ>
塗料が溶けると海への影響は無いのか。
船底塗料の仕組みとしては、段階的に溶ける樹脂の中の亜酸化銅成分がほんのわずかずつ船底に溶け出し、フジツボの幼生が付着するのを妨げる程度の刺激を与える事だそうだ。
1990年代まで使用されていた有機スズの塗料に比べて海洋生物への影響は小さいと言われている。